ぼくの初めてのドラクエはファミコン版の4だった。4に惚れ込んで1と2をファミコンでやり、5に合わせてSFCを買って6とリメイク3をやった。その後、ドラクエ7のころにはゲームをじっくり遊ぶ余裕がなくなり、8はハードを持っていなくてスルー、9も発売当時はプレイしなかった。10はWindows版のオープンベータで少しプレイしたものの、本格的にプレイ開始したのはVer4時代で、メインクエストはVer3の中盤で停滞している。
ドラクエ11が発表されたばかりのころ、強い興味を持ち、「いつかプレイしたい」と思って徹底的にネタバレを避け続けた。それから数年経って、世間ではとっくにSwitch版が出ているというのに、ようやく3DS版をプレイすることができた。
ネタバレを避け続けた甲斐があって、ぼくはパッケージの裏に書いてある程度のこと(勇者が「悪魔の子」と呼ばれる)すら知らなかった。でも、できればそれすら知らずに始めたかった。
ほとんど何も知らずに始めたドラクエ11は本当に面白くて、楽しくて、遊んでも遊んでも遊び尽くした感じがしなかった。無限に遊べるんじゃないかと思うほどの遊び心地。かなり「For Me」なゲームに出会えた。
ここから感想(ネタバレあり・長文)
昔のドラクエが好きだった人向け
ドラクエ11は、現代のRPGというよりは昔ながらのドラクエだと思う。もちろん現代的な要素はちらほらあるけれど、ファミコンやSFC時代のドラクエらしさもかなり残っていた。
それが「昔のドラクエが好きだった人」を狙い撃ちしているような感じがした。特にファミコンやSFC時代のドラクエファンに向けているという気がする。
3DS版は(Switch版もらしいが)過去作の世界を少しだけ冒険できるが、それがまた当時のハードの画像なのだ。特に1や4は懐かしいファミコンのグラフィックで、1なんか人々がちゃんとカニ歩きしている。感動。2、3、5、6もSFCのグラフィックで、とても懐かしかった。
8、9はいまだにプレイしていないのでネタがわからなかったが、その他の作品世界はなかなか面白かった。
「ふっかつのじゅもん」などという懐かしい項目もある。ファミコンの1や2をやったときは「ふっかつのじゅもん」をメモするノートが必携の品だった。思えばあれが「冒険の書」だったな……。
3DSでは2Dモードの表示もできるが、それが宝箱探しには結構役立った。ぼくは無意識に敵を避けてしまう習性があるので、レベリングしたいときはシンボルエンカウントでない2Dモードがいい感じだった。
住める感じの遊び心地
クエストがあって、装備品制作があって、素材拾いがある……。そんなところから「ファンタジーライフ(3DS)」を少し連想していた。遊んでも遊んでも遊べる感じ。最終的にこのゲームを卒業しようと思ってほどほどのところで終わらせたが、それでも100時間かかった。(クエストは全部やった)
最強装備を全員分揃えようと思ったらまだまだ時間がかかったと思う。
あとから取り返しのつく要素も多く、100%遊び尽くしたい人にも向いているゲームだと思う。ひとつのゲームをじっくり時間をかけて遊びたい人なら結構楽しめると思う。
勇者の勇者らしい人柄が描かれていた
ドラクエ11の勇者は、セリフこそないが、どうやら相当に人柄の良い少年のようだ。お尋ね者扱いをされながらも、旅先で次々に自分を信じてくれる人と出会い、敵意剥き出しの相手にも善人と認めてもらうことがあった。
一度勇者の力を失ってしまってから、もう一度旅をする過程で彼がたびたび言われるのは、「あなたといると勇気が出てくる」という言葉。
主命だからと勇者の命を狙い続けた騎士が初めて行動を共にしてくれたときには、「お前は不思議な男だ。一緒にいると勇気が湧いてくる。暗闇を照らす太陽のようだ」などと言われる。
ケンカをした実の父親に会う勇気が出なかったある人は、勇者と話していて「不思議と不安がなくなった」というふうに言ってくれたと思う。
ぼくがプレイしたのは3DS版なのでヨッチ族がいるのだが、彼らも「勇者さまと一緒にいると勇気が湧いてくる」と口々に言う。ヨッチ族が特殊な感性を持っているのかと思っていたが、そうではなかったらしい。そして、それが「勇者の力」由来なのではなく、彼の人柄からくるものであるらしい……。
ドラクエ11の勇者は、周りに勇気と希望を与える者として描かれ、それが抵抗なく受け入れられた。素直そうだ、真面目そうだとは感じるが、それが嫌味でない。パーティメンバーに可愛がられている姿も素直に受け入れられるのは、彼にセリフがないからこそかもしれない。
勇者にセリフがなく、表情だけだからこそ、逆にプレイヤー各自の目線で自分なりの好青年を思い描けるのだろう。
ただ。
「ドラクエの勇者=没個性なプレイヤーの分身」だった時代とはやはり違う。ドラクエ11の勇者には性格や彼なりの意思があり、セリフがないからはっきりと知れないだけで、プレイヤーとは別個のキャラクター性を持っている。
人物を深く描写できるようになってきたからこそ、無個性な主人公を物語に参加させることは難しい時代なのかもしれない。
「勇者とは最後まで諦めない者」。そう言われて送り出され、その先の旅路で彼が勇者の力を取り戻したとき、「ああこの子の心は一度折れてしまっていたんだな、それが蘇ったんだ……」と思ったものだった。そう、彼にはプレイヤーとは離れた人格があるのだ……。
過ぎ去りし時を求めることについて
諸説あるらしい「過ぎ去りし時を求める」部分。ぼくも最初は強い抵抗を感じて、その先に進みたくない気持ちで大いに悩んだ。
というのも、天空魔城に乗り込む前はまだ全然遊び尽くした感じがしておらず、このまま冒険が終わってしまうのがイヤで、まだ行ったことがない場所をしらみ潰しに全部訪れていたのだ。
そして、まだ世界に謎が残っていることに気づいた。枯れてしまった大樹の芽、どこで手に入るかわからない「さいごのカギ」の扉、バンデルフォン地下の封印された謎の扉、そして「勇者の星」に刻まれた文字……。
「この先に進んでも冒険は終わらないに違いない」と思って進んだ結果、その先は過ぎ去りし時を求める道だった。
悩みながら各地を巡った。仲間たちのイベントを起こすと、この時代に留まってほしそうなことをそれぞれに言う。
この時間軸は、確かに理想像ではないのだろう。だが、もがき苦しみながら戦ってきた道なのだ。苦しみの淵から仲間たちと共に這い上がった世界だ。その時間を巻き戻しても良いのか。
ぼくは「時間を戻してやり直す」というシナリオが元々苦手だ。それに加えて、自分が歩んできた冒険の時間が無になってしまうように感じて、なかなか決断できなかった。
だが、ドラクエ11のサブタイトルは「過ぎ去りし時を求めて」。この先に進むからこそドラクエ11なのだろうと思う部分があった。
それに、さいごのカギを手に入れて各地の扉を開けて歩かないと「ドラクエやった」って気分がしないし。序盤で見つけた謎の扉が終盤で全部開けられるのがドラクエの醍醐味だと思ってるんだ……。
一度スタッフロールが流れること、それなりにハッピーエンドにはなっていることで、「ここで冒険をやめてもいい」という開発者からのメッセージも感じた。だからこそ、この先に進むとしたら、それは自分の意志だと思った。
悩んだ末、ぼくはこの時間軸の冒険の書を残して、過ぎ去りし時を求めることにした。
が。
最初のうちはつらかった。以前歩んだ時間こそが正しかった気がしてしまうし、「あの苦しみを共に乗り越えた時間がない仲間たちは、本当に彼らなのか」という気もした。
マルティナなんか、魔物に変えられてしまった経験からデビルモードを体得したのだと思うのに、その経験なしにそんな力に目覚めるのはおかしいのでは。グレイグが勇者の盾になろうとする理由も、とても薄い気がしたし。
それにぼくは、ソルティコの町でシルビアの世助けパレードの人たちがすっかり馴染んで暮らしているのが本当に好きだった。「さすが彼の元に集った人たちだ」と思ったんだ。シルビアの優しさと正義感に惹かれた人たちが、町の一員として人々に希望を与えていることが嬉しかった。だからそれが見られなくなってしまうことが悲しかった。
そしてもっとつらかったのは、なんだかんだで過ぎ去りし時の世界で冒険を進めて苦痛がなくなったころに、残しておいた冒険の書を開いたとき。
二つの世界の様々な違い、そして過ぎ去りし時のその先のほうが自分の思い入れが強くなっていることを感じて、「もはやこの時間軸は自分が暮らす時間ではない」と思った。
それを感じたとき、改めてつらかった。ある意味では割り切って進められるようになったとも言えるけれど……。
それでもぼくは過ぎ去りし時を求めたその先で、世界に残った謎を解き明かして、本当の意味でのエンディングを迎えてよかった。この物語を体験してよかった。このゲームをプレイしてよかった。
二つ目のエンディングについて
「真のエンディング」と書こうか悩んだが、どちらが真実ということもないと思ったので「二つ目」と。過ぎ去りし時を求めた先のエンディングで、セニカがさらに過ぎ去りし時を求めることになるが……もう時間の繋がりがどうなってるのかよくわからない。
わからないが、ローシュの目元と主人公の目元は非常に良く似ているし、セニカの美しい髪と主人公のサラサラの髪もどこか通じるものがある気がした。彼らの子孫がユグノア王国を築いたのだろうか? そうなると本当に意味のわからない時間の流れになってしまうので、その可能性は無いとするほうが正しい気はするが……。
過去シリーズとの関連づけは無理がある気がする
聖竜が竜王と思われる描写があったが、これもかなり無理があるんじゃなかろうか……。
最後のほうではドラクエ11を語ったと思われる物語の本を閉じるドラクエ3勇者の母のシーンがある。ドラクエ11と思われる本は2冊あるが、上下巻とかなのだろうか……。
ドラクエ11の勇者の剣や紋章がロトのものだから、史実を語り残した本と考えるのが妥当なんだろうけど、架空の物語として、勇者ロトはその勇者にあやかったという話にもできなくはないのかな。
なんにせよドラクエ11とロト3部作とは無理のある関連づけのように思った。11→3→1→2となるはずであるが、ヨッチ族たちは1、2、3の冒険の書を既に保管しているわけだし。ヨッチ村は時の流れから切り離されているのかね……?
まぁ深く考えると関連づけに無理がある気がしてくるが、エンディングをさらっと軽く見て「これは竜王のことかも」「あぁ3の勇者だ」とさらっと思う分には普通に感動できた。
各キャラ語りをちょっとだけ
勇者は上のほうでだいたい書いたので割愛。歴代で一番勇者力が高い気がした。
カミュはお尋ね者になったばかりのころから勇者と信じてくれた人だから、とても心の支えになった。勇者が凹んでると頭撫でてくれそうなお兄さんだよな。過去を知ったときにはなかなか衝撃だったが、ハッピーエンドになったのがよかった。短剣持たせてヴァイパータナトスコンボさせてたが、10ほどは楽しくなかった……。
ベロニカ。彼女が犠牲となっていたことを知ったときは本当にショックだった。大人に戻って再登場するのかと思っていたよ。簡単に蘇生されるのではなく、大きな犠牲を元にしなければいけなかった点はとても良い。しかしAIのポンコツさをかなり感じるキャラの一人だった。
セーニャ。ミネアを明るくした感じのキャラだなーと思っていた。ベロニカとマーニャはあまり重ならなかったけどさ。セニカの装備を着られるせいで勇者とカップルみたいに見えるのが複雑であった。回復魔力を上げると意味がわからないぐらい回復するベホマラーが面白かった。
シルビア。いやぁ素敵なオネエさま。優しくて正義感が強くて、沈んだ顔をしている人がいたら積極的に声をかけてくれそう。「子どものころから人を笑わせるのが好きな人だった」と言われていたな。人々を笑顔にしたいと信念を持って旅する姿はかっこよかったぞ。何にでも「ちゃん」づけするから和んで良い。
マルティナ。彼女のことは真面目そうに見えていたので、スキルマップの「おいろけ」に非常に困惑した。ストーリーを進めるうちにだんだん受け入れられるようになったが、お色気キャラであってほしくなかったというのが本音。かっこいいお姉さんでいてほしかったのだが……。格闘技の印象が強かったのだが槍一辺倒で育ててしまった。
ロウ。じいちゃんが爪を使うのかっこいいと思って、爪で戦わせていたが、ステータス的にもスキル的にもあまり向いていないのが現実だった。でも爪使うじいちゃんかっこいいよ。エロじいさんな面もあったが、真面目な賢者でもありつつ、和やかなおじいちゃんなところがとても魅力あった。王国再建を頑張ってほしい。
グレイグ。なんだか一番のお気にいり。あまりにも忠犬なので「わんこくん」と呼んでいた。過ぎ去りし時を求めたあとの勇者への忠誠がどこからくるのかピンとこなかったが、彼が忠義を捧げる理由はとてもシンプルなのかもしれないと思ったら愛しくなった。「祖国の王だから」「勇者だから」で命を捧げることができるのがグレイグという騎士なのだろう。ムフフ本を一目見て詳しく見抜いたり、人に言えないぱふぱふを知っていたりしたところが面白かった。
デルカダール王。とてもかっこいい王様だと思っている。拠点を一晩守り抜くと皆を鼓舞したところや、マルティナに冠を授けるところなんか特に。すごく好きなキャラだ……。
エマ。とても可愛くてずっと思い出に残っていた。まさか再会できるとは思わなかった……本当に嬉しかった。もちろん結婚したしお守りも大切にしていた。お守り、真と無印を両方つけると耐性が100%になるんだと気づいたときはちょっと感動した。2枠使ってつける価値があるかは微妙だが。
ほかにも思い出に残っているキャラはたくさんいる。そしてドラクエのキャラがこんなに奥深く描かれるというのが驚きだった。その辺は現代のゲームならではという気がする。ぼくの知っているドラクエ(1~7)は、人物描写はそこまで深くなかったので。10は最近のゲームということもあって深く描かれているキャラもいるけど……。
総評:名作。やってよかった
ドラクエ11にはとても満足している。発売からプレイできるまでに数年かかってしまったが、その間にネタバレを徹底的に避け続けて本当によかった。プレイできてよかった。出会えてよかった。大いに満足している。
ぼくがやったのは3DS版だが、Switch持ってる人ならSwitch版が良さそうな気がしている。PS4版もグラフィックが違いすぎてちょっと興味はあるが……3DS版やSwitch版ぐらいのデフォルメ感がドラクエとしてしっくりくる気がしている。
今からやるなら11S! Steam版もあるよ。